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2008年11月30日日曜日

鐘楼の見える運河



ヴェネツィアのスケッチ、1日目は、ゴンドラのスクウェーロ(造船所)の近くで1枚描いてから、運河を西に向かって歩いてみた。最初の橋を右手に進み、迷路のように続く岸辺の道をゆくと、サン・バルバナ運河にであった。
遠くに教会の鐘楼が聳え立ち、運河の両側には沢山の舟が繋留されている。空の色が水面に映えて、午後の日差しの中で輝いて見えた。ここで描いたスケッチに色をつけたもの。
ヴェネツィアの沢山ある運河と橋の中でも、この辺りは、観光客の姿もなくとても静かだ。近くの路地で、遊ぶ子供たちの声や、岸辺をゆっくり歩きながら話に興じるお年寄りの姿などみかけて、普段の生活の様子を窺うことができた。

2008.10.8.  F6  
マーメイド水彩紙 荒目
 ペン  透明水彩

広場のある風景



ヴェネツィア最後の日は、一日中歩きとおしてすっかりくたびれてしまい、サンタ・マルゲリータ広場で一休みしたのを思い出す。
午後も遅い時間になっていたせいか、広場には、三々五々、人が集まってきて、それぞれが思い思いに時を過ごしているようにみえる。


夕刻、広場に集まってきて漫ろ歩きするのをイタリアでは、「パッセンジャータ」と言うのだそうだが、さしあたり日本ではこのような習慣はない。強いて言うなら、日本の「お祭り」や「縁日」に、三々五々、人々が連れ立って歩くのに似ているような感じを受けた。しかし、かなり違うと思われるのは、広場に集まってくる人々が殆ど家族のように顔見知りの中で、挨拶を交わしながら冗談を言い合ったり、一日の出来事など語り合ったりしている姿だ。
広場を中心にして出来上がっている共同体的な生活のスタイルが、その歴史的な裏づけとともに色濃く残っているのではないかと思う。
日が落ちて辺りが暗くなってくる頃からは、観光客の姿もめっきり減って、昼間とは違う雰囲気につつまれてくる感じがして、いつまでも広場を立ち去りがたかったのを思い出す。


2008.10.09.  F6 
   ワットマン水彩紙
    ペン  透明水彩

2008年11月27日木曜日

ヴェローナの路地裏



タリア旅行6日目。ヴェネツィアで4泊してから、次の宿泊地リーヴァへ移動する途中で、ヴェローナの町に立ち寄ることにした。11時過ぎにヴェローナに着き、川岸のレストランで昼食を済ませてから、旧市街の街中を歩きながらスケッチを楽しんだ。
グループから一人離れて、裏通りをあるいていると、思いがけず絵に描きたいと思う所に遭遇した。細い路地裏に
店を出しているレストランの明かりが漏れていて、その向こうには教会の鐘楼が屹然と聳えている。手前の建物のオレンジ色の壁に光が当たって、濃い影をつくっている。
路地の奥には向かいの建物の色を映している暗い家壁も見えていて、何か特別の雰囲気を醸し出しているようにも見えた。
今回のイタリア旅行では、特に色彩自分の興味が引きつけられるようで、どの場所でも、鮮やかな色のコントラストばかりが目に飛び込んでくるような気がした。
それが、いつものスケッチ旅行とは何か違っていたところだ。

2008.10.10.  F6   
ワットマン水彩紙  
ペン  透明水彩

ゴンドラの渡し船



ヴェネツィアの3日目は、リアルト橋の北側の界隈を巡り歩いて、スケッチを描いた。   
昼ごろに、ゴルドーニの家のあたりを歩いていると、大運河に架かるゴンドラの渡し船乗り場に行き当たった。その近くでスケッチしてから、この渡し船に乗ってみることにした。
客は誰もが立ったままで乗船するのが
この土地の流儀で、わたしも真似してみたが、大運河を通るモーターボートなど大きな船の波が打ち寄せて揺れるのでなかなかコツがいる。お年寄りの中には、座って乗船する人もいたが、土地の人たちは流石に慣れていて、危なげなくのっている。
片道が1ユーロの半分の代金で、往復しても1ユーロで乗れる。ヴァポレットも便利だが、この渡し船もなかなか人気があるようだ。大運河に3箇所ほど運行されているようで、地元の人の足として利用されている。

2008.10.09.  F6  
  ワットマン水彩紙   
  ペン  透明水彩

2008年11月22日土曜日

サン・ジャコモ教会


ヴェネツィアでの3日目は、朝から霧がかかっていて辺りの様子がはっきり見えないほどだった。サン・マルコ広場に近い乗り場からヴァポレットに乗り、一路リアルト橋をめざした。着いてみるとリアルト橋の半分ほどが霞んでいるような状態で、霧は一向に晴れる気配がないようだ。
「ワインの岸辺」と呼ばれている運河沿いの道をいくと、それぞれの店先でテーブルや椅子の準備をしたり、岸付けされた船から品物を運び入れる人の姿が活気を帯びてみえた。岸辺から北に抜ける小さな路地を巡ってみると、通路にせり出した隊商宿の建物などが続き、その昔アフリカやイスラームの世界から交易で訪れていた人たちの名残をとどめている一角をみた。
リアルト市場は、当時ヴェネツィアの中心にあって、経済活動をいってに担っていた一大拠点として、ヨーロッパにも影響を及ぼすほどであったという。サン・ジャコモ教会の建物や時計などにもそれが偲ばれる。回廊が市場を取り囲むように造られていて、手形交換所や両替所(現在の銀行)などの事務所がその中に立ち並び、大層な繁栄をもたらしていたようだ。
そんな歴史を今に伝える広場で描いてみた、その日の一枚目だ。

2008.10.09.  F8   
オリオン・ソフトウーブ水彩紙
   ペン  透明水彩

大運河沿いの館



ヴェネツィアでのスケッチ旅行2日目の夜には、ホテルに近い所を散策しながらスケッチを楽しんだ。この季節、午後5時を過ぎると、すっかり暗くなってしまうが、ヴェネツィア本島の主だったところでは、観光客が多いせいもあってお店が遅くまでやっていて、その明かりが路地にも広がり結構ものが分かる程度には見える。
特に建物などシルエットのようになっていて、余計なものが見えないので、スケッチするには良いところもある。大運河沿いの館や、路地裏、広場なども描こうと思えばいくらでも描ける条件があるのだ。今回の旅行での収穫の一つだ。
この絵は、大運河に架かるゴンドラの渡し船乗り場から、東側の岸辺に立つ館を描いてみたものだ。手前の船の辺りや、岸辺に続く1階の部分は、細部が殆ど見えない。しかし、昼とは違うヴェネツィアの顔を見たような思いで、ペンを走らせた。
細い運河から洩れて来る光が印象を強くして、とても幻想的であった。


2008.10.07.  F6  
 マーメイド水彩紙   
 ペン  透明水彩

2008年11月20日木曜日

水辺の出入り口をもつ建物



サンテ・ジョバンニ・エ・パウロ教会に通じるあたりに、サン・ジョヴァンニ・ラテラーノ運河と、もう一つの運河が合流する箇所がある。そこに架かっている橋の辺りで、ちょうど、なにやら撮影が始まるようで、カメラを持ったスタッフが忙しそうに動き回っている。近くには煌びやかな衣装をまとった女優らしき人も待機していて、本番までの準備が進んでいる。
スタッフの中で、とりあえず急ぎの仕事が無いのか暇そうにしている若者が声をかけてきた。聞けば、撮影現場のデザイン画(?)を描く人のようで、撮影に使う現場の見取り図と配置図のようなものを見せてくれた。イタリア人ではなく、インドかパキスタンの辺りの人のようだ。
私が水辺の風景を描いているのを先刻から眺めていて、しきりに感心して、「貴方はマエストロか」と尋ねてきたので、「そうではないが、絵を描きながら旅している」と返事を返すと、握手を求めてきたので、私も手を伸ばしてかたい握手。
絵が好きな人は、どこにでもいるものだ。彼の描いたスチール画は、なかなかの出来栄えだった。


2008.10.08.  F6  
 マーメイド水彩紙  
 ペン  透明水彩


サンタ・マリーナ広場の露天商



ヴェネツィアでの3日目、午後から東の地区を巡りながらスケッチを楽しんだ。
迷路のように入り組んだ路地を歩きながら、幾度か橋を渡って行くと急に視界がひらけて、広場に出た。地図を見ると、どうやらサンタ・マリーナ広場のようだ。
歩き疲れていたので、広場のカフェで休むことにした。ちょうど前に露天商が野菜や果物などの商いをしているのが目に付いた。いす席に座りながら、その場から見える風景を絵にしてみることにした。緑色のテントの屋根と、買い物をする女性の服が鮮やかなコントラストをしていて描きたくなったからだ。
座って描くと目線が低くなって、また、違ったものが見えてくるように感じた。

2008.10.08.  F6   
ワットマン水彩紙
ペン  透明水彩

2008年11月16日日曜日

隘路に繋がる広場



ヴェネツィア2日目は、午後から東の地区を散策しながらスケッチを楽しんだ。
ヴェネツィアには、沢山の小さな島があり、それぞれが橋で結ばれているが、それぞれの島ごとに必ず広場(カンポ)があり、居住する人々の憩いの場所になっている。夕刻ともなれば、三々五々連れ立って広場に集まり、挨拶を交わしては談笑したり、バールでオンブラ(ワイン)を飲みながら楽しいひと時を過ごすのが日常になっている。日々の生活を楽しんでいる地元の人たちの姿が、そこにはある。
とりわけ、元気なお年寄りの姿が目に付くように感じた。


2008.10.8.  F6  
ワットマン水彩紙
ペン  透明水彩

サンタ・マリーナ広場付近の運河



ヴェネツィア一日目は、午後路地裏の通りを散策しながら、迷路のような町並みを楽しんだ。その中でも、お気に入りの場所が、この運河だ。歴史を感じさせる古い建物が立ち並ぶ運河沿いの道は、どこを見ても描きたくなるような風情のところばかりで、夢中になってペンを走らせていたように思う。
夕刻近くなり、日も翳ってきた運河の様子は、言葉にならないような色に染まり、溶け込みそうな気配を見せていた。色数を抑えて、その時の印象を表現してみた。

2008.10.8.  F6   
マーメイド水彩紙 荒目
  ペン  透明水彩

2008年11月15日土曜日

リアルト魚市場裏の運河



ヴェネツィア4日目は、朝から霧がかかっていて曇り空の天気だった。サン・マルコ広場の船着場から水上バス(ヴァポレット)に乗って、リアルト橋を目指した。案の定、橋は霧の中に包まれていて、その全容は見えず、大運河(カナル・グランデ)の水面も定かでないほどだった。
ワインの岸辺を歩きながら、細い路地を巡って、古の隊商宿の面影をたのしんだ。一回りしてから、リアルト市場の面影を残す、サンジャコモ教会の辺りから、魚市場を周辺を散策した。朝早くから、野菜や果物を売る市が立っていて、大勢の買い物客で賑わっていた。隣にある魚市場でも、近海の海で取れた海産物が所狭しと並べられていて、見たことも無いような魚介類の姿を目にした。価格も比較的安いように思う。
きちんとした身なりをして地元の人たちが店の主と談笑しながら買っていく姿を眼にした。この辺りは、イスラームからの物品も陸揚げされて取引されていた歴史もあり、活気と猥雑さの中に人々のエネルギーを感じさせるものが残っているように思う。

2008.10.09.   F8   
オリオン・ソフトウーブ水彩紙
   ペン   透明水彩

夜の小道



ヴェネツィアの夜景を描きたいと、裏通りを歩いていると、店の明かりが外にもれて、前の通りや橋や運河の辺りを照らしている所にであった。月は出ていないが、建物の屋根の辺りまでうすぼんやりとシルエットになっているのが見える。
サン・マルコ広場から、ほんの少し外れただけなのに、人通りも殆ど無くて、ひっそりとしているその橋を老婦人が渡っていく。近くのバールらしい店からは賑やかな人声も響いてきて、ヴェネツィアの夜は暮れていく。

2008.10.8.  F6  
 ワットマン水彩紙
 ペン  透明水彩

2008年11月13日木曜日

赤い家の見える運河


イタリア旅行、ヴェネツィアでの2日目。午後はバルバナ運河のあたりまで散策して、2枚ほどそこでスケッチしたものの1枚。小さな橋を幾つか越したところで、急に視界に赤い建物が飛び込んできた。一つ向こうの橋の奥に見えるその建物が描きたくなってスケッチブックを広げた。
左手の建物の壁はは弧を描くように湾曲していて、その辺り一帯が暖色系の色に包まれているように感じたものだ。とっておきの場所を発見したような興奮に包まれて、幸せな気分に浸りながら、ペンを走らせた。


2008.10.8.  F6   マーメイド水彩紙 荒目   ペン  透明水彩

2008年11月11日火曜日

サン・トロヴァーゾ付近の運河


2日目は、ホテルに近い乗り場からヴァポレット(水上バス)に乗り、アカデミア橋で降りて、サン・トロバーゾ運河に行くことにした。運河に沿って南に進むと、やがてゴンドラの造船所が見えてきた。この辺りは、観光ポイントの一つのようで、とても賑わう所のようだが、まだ、朝早いこともあってそれほどの人出ではない。
さっそく、造船所の裏手に回って、船が係留してある館の前で、描いたみた。その場で、色をつけていると、私の立っていた玄関の家の主が出てきて、「この辺りはいい所でしょ。」と話しかけてきた。私も、片言のイタリア語で挨拶を交わすと、その女主は、ニコニコしながら、先に見える橋を指差して、「あそこで描いてみるといい。」と、勧めてくれた。描き終えて時間をみると、もう昼時になっていた。

2008.10.8.  F6
モロー水彩紙 中目
 ペン  透明水彩

サン・モイーゼ広場付近の運河


イタリア旅行2日目は、ヴェネツィアで泊まったホテルの直ぐ近くにある運河を描くことから始まった。前夜、ローマ広場の近くから水上タクシーに乗って着いたのがちょうどこの右手の広場だった。運河に架かる橋の上から、まだ明けきらない運河を見渡すと、突き当りの辺りが白々として、なにやらマリア像のようなものが飾られている壁が見えてきた。水面に映る建物の影が緩やかに揺れて見える。まぎれもなく、ヴェネツィアにいるのを実感した朝だった。

2008.10.8.  F6  
マーメイド水彩紙 荒目
  ペン  透明水彩

2008年11月10日月曜日

ブラーノ島の町並み


イタリア旅行3日目は、朝からヴァポレット(水上バス)に乗って、ムラーノ島とブラーノ島に足を伸ばした。舟で1時間弱の行程の予定だったが、何かその日だけ規制があって大回りしなければならず、2時間近くかかってしまった。
ムラーノ島は、ヴェネツィアンガラスの工房がある所として知られているが、私たちの目的がスケッチ旅行であったので、一通り見た後、ブラーノ島まで行って時間を取ることになった。ブラーノ島の家々は、とてもカラフルな色に彩られていて、本島とは違った雰囲気をもっている。漁業とレース編みの島として知られている所だ。メインストリートの町並みは、土産物の店などで賑わっているが、路地を曲がって裏手に回ると、洗濯物など干してある軒下が続いていて、島に住む人たちの生活の様子を垣間見ることが出来た。


2008.10.8.   F8
オリオン・ソフトウーブ紙 中目
   ペン  透明水彩

第五回加藤正三郎水彩画展 開催中です!


                              サン・マルコ寺院  F6

2008年の10月6日より、ヴェネツィアとリーヴァにスケッチ旅行に出かける。

ヴェネツィア本島に4泊して近くの島も見てきたが、やはり、本島の街並みがひときわ魅力的であった。この絵は、泊まったホテルに近いサンマルコ広場で描いたものの一枚。観光客で賑わうサン・マルコ寺院の前で、スケッチしたもので、私にとっては、忘れられないひと時だった。

夕暮れになると、広場に面したカフェに楽隊が出て、素敵な曲を聞かせてくれた。向かい合わせで、二つの楽隊が演奏していたが、どちらも互いに邪魔になることがなく、周りを取り囲む聴衆を魅了して、夜遅くまで賑わっていた。サン・マルコ広場の大きさを実感した出来事だった。

早朝と、人影が少なくなる夜半の広場が、とても幻想的で、忘れられない思い出のひとつだ。


2008.10.7.  F6 
モロー水彩紙  粗目
  ペン  透明水彩